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08 おさんぽ 猫の姿なら護廷内を散歩して良い。 そう言われたから一護は転身してお散歩中。 危ない場所には近づかないこと(これは夜一に事前に教えて貰っている) 決して人間に戻らないこと(裸で彷徨くのは拙いのだと言われた) その二つを約束させられた。 猫は高いところが好きだから。 隊舎の屋根に上って一伸び。 「にゃあ」 お気に入りの場所でひなたぼっこしよう。 そう思って一護がとある隊舎の縁側に行くと。 「おお、いちごではないか」 四人の人がいた。 一人は既に顔なじみ、いつも鯛焼きをくれるルキアという黒髪の少女だ。 奇しくもルキアは一護にいちごという名前を付けて。 ただし発音は果物の方の名前であったが。 一護は何だか嬉しくてそのままにしている。 もう一人の黒髪の少女に手招きされる。 一護は一瞬躊躇って、けれどルキアと一緒だから、と。 それに悪い人ではないようだから。 「うみゃあ」 頭を撫でられる。 喉を撫でられるのは気持ちよくて、一護はごろごろと喉を鳴らした。 「いちごちゃんって言うの? 私は雛森桃よ。よろしくね?」 いちごと桃。 美味しい果物の姿を思い浮かべた。 「人なつこい猫だな」 そう言って赤い髪の男が触れようとして。 一護は警戒心も露わにしっぽを立てた。 フー、と声を上げる。 「阿散井。猫ってのはそうやって触るんじゃねえよ」 もう一人の、顔に数字を刻む男が触れても一護は逃げた。 さわり方など大して関係ない。 馴れない人は嫌なのだ、と一護はルキアの傍に。 「最近この猫、十二番隊の隊舎近くで見かけますよ」 口惜しそうに赤い髪の男が見下ろしてくる。 十二番隊。 悪鬼の巣窟なんて呼ばれていることを知らない一護は、そうだとばかりに「にゃあ」と鳴く。 「… 義骸に人の魂魄詰めてんじゃねえの?」 こちらは腹立たしいと見下ろしてくる。 ふん、と無視をする。 いけ好かない男だ。 「いちご、鯛焼きを食うか?」 そう言ってルキアは縁側に鯛焼きを置いた。 有難うと、鳴いて、一護が食べやすく少し冷めたあんこに口を付けようとした時。 背後から伸びてくる手。 「チビ助」 一護の爪が閃いた。 「痛てえっ」 「先輩、顔が網みたいになってます」 男の顔に元々入っていた縦の傷と。 一護が付けたばかりの横の傷がちょうど格子状になっている。 いい気味だ。触るからいけないのだ。 それにチビ助じゃない! 「あ、いちご」 ごめんなさい、と一護は鳴いて。 一護はまた隊舎の屋根に。 「あーあ…いちごちゃん逃げちゃった」 雛森が残念そうにしていた。 「…あの猫…次は絶対に触ってやる…」 「言い方がいやらしいっスよ」 いやらしい刺青を彫った顔を押さえて、修兵はうめく。 それを見て、恋次は嘆息した。 |
2006/10/22 |