あれ、俺ってこんなに小さかったっけ? いやいや、周りの男共がでかいせいで小さく見られがちだが、平均身長よりも少し高いはずだ。 なのにどうして、この本が取れないんだ! 一護は背伸びをした。 いつもは余裕で届くはずの、隊員名簿をしまった、それなりに高い棚。 少しだけ跳んでみた。 届かない。 精一杯背伸びをしても、跳んでみても、本に掠りもしない。 いやいや、昨日までは届いていたぞ。 もっと言うなら、昼前までは届いていた。 一護の知らぬ間に、棚がより高いものへ変わってしまったのだろうか。 「っくそ、脚立、どこだっ!」 誰かに頼んで取って貰う、という発想はない。 そんな恥ずかしいことは頼めない。 十番隊隊長という矜持がそれを許さない! 何故か、普通の男子の平均身長よりも、格段高い護廷に住む死神の平均身長。 隊長格に至ると特にそれは顕著で、総隊長である山本を除けば男性は皆、一護よりも高いのではないか。 「脚立ならここにありますよん」 「おお、サンキュ… 、って何で此処にいる浦原?!」 おお浦原、成長期か?と言いたいぐらい、同僚、十二番隊の隊長の浦原の背もずいぶんと伸びていた。 お得意の研究で成長剤でも作ったのか、ちょっと分けてくれ、と一護は思った。 「いやあ。ずいぶんと可愛らしくなったじゃ、ありませんか」 いつもは一回り大きな男は、今日は頭一ついや二つ分くらい高いのではないだろうか。 浦原に見下ろされ、一護は顔を顰めた。 「何だと?てめっ、自分が伸びたからって偉そうにっ」 「おや。アタシは300年前から1ミリも伸びちゃいませんよ」 「じゃあ何で、お前がでっかくなってるんだ!」 浦原はだらしなく頬を弛めている。 鬼の喜助 なんて通り名が嘘のようだ。 反対に、一護はまるで親の敵にあったかのような顔をした。 「アタシが大きくなったんじゃなくて、一護さんが小さくなったんスよ」 ほうら、と浦原が一護を抱き上げた。 「な、な、何でっ」 「何故、ってその様子じゃあもう一つの変化も気づいちゃいないようだ」 変化? 幼い仕草で首をかしげた一護の胸元に、浦原の手。 むにゅ。 「なかなか大きめで柔らかいですねえ」 何の話だ。 そんなところにあんパンなんて詰めちゃいない。 そう思って、一護の視線は浦原の手、もとい胸元へ。 「んー。良い感触だ」 そこにはあんパンを詰めたわけでもないのに、それなりに膨らんだ胸元が。 はだけた胸元から覗くのは、男にはないはずの、膨らみ。 断じてあんパンを詰めているわけではない。 「ちょっ、何で、え?つか、触んなっ!」 固まりかけた思考をすぐさま解凍した一護は、未だ胸元に触れるもとい揉んでいる不埒な手を打ち払った。 「な、なんでっ え?!」 「ちなみにこっちはありませんよん」 下肢の付け根に触れられる。 確かに、ない。 男を象徴するしるしはなく、真っ平らのようだ。 「っ 触ってんじゃねえよ!!」 顔を真っ赤にさせた一護は、浦原の頬を渾身の力で殴り飛ばした。 一瞬失神した浦原を問いつめて分かったのは、どうやら彼が性転換の薬を一護の昼食に混ぜた、らしい。 その薬は完成品、見事一護は性別を本来の男から女に変えてしまったようだった。 |
2006/09/28 |